聖杯戦争――七人の魔術師達がそれぞれの使い魔を用いて争う戦い。 その勝者には『聖杯』によって、どんな願いでも叶えられる権利が与えられる。 サーヴァント――七人の魔術師、マスターに従うそれぞれ異なった役割を持つ使い魔達。 それは聖杯自身が招き寄せる、英霊と呼ばれる最高位の使い魔である。 剣の騎士、セイバー。 槍の騎士、ランサー。 弓の騎士、アーチャー。 騎乗兵、ライダー。 魔術師、キャスター。 暗殺者、アサシン。 狂戦士、バーサーカー。 この七つのクラスのいずれかの属性を持つ英霊が現代に召喚され、マスターに従う使い魔―――サーヴァントとなる。           そして、聖杯戦争の舞台――それは、最萌学園。            「―――問おう。貴方が、私のマスターか」      開幕。  「私達はただ命じられたまま戦うのみ……そうでしょう?」  「なんか初っ端から危なそうな人だー!!」  「こ…こんなのが神聖で美しくそして強力な…私の使い魔…?」  「あんたから呼び出しといて言うか!?」      激化する戦い。  「――――セイバーのサーヴァント、伊達政宗」  「あれがライダーの宝具……!?ったく、あんな物とどう戦えって言うのよ……!」  「準備よし――火星ロボ、出撃します!」      混乱する戦場。  「な、な――キャスターが肉弾戦を挑むですって―――!?」  「打撃系など花拳繍腿!関節技こそ王者の技よ!!」  「あの子がアサシン……?確かに格好はそれっぽいけど、女の子なんじゃ……」  「油断しないでください。あの瞳、気配――かなりの場数をくぐって来ているはずです」      巻き込まれていく生徒達。  「マスターとサーヴァントの関係……ローゼンメイデンと似たようなものかしら」  「魔法で別の世界に召喚されるって、よくある事なのかなあ」      ――戦いの収束に乗り出す者。  「魔力の残滓が残ってる。ここで戦闘が起こったんじゃないかな」  「それじゃ、さっさと調査に入りましょうか」      ――自らの目的のために動く者。  「まーた儲かっちゃいそうナリ〜♪」  「フフフ……この状況こそ私がこの学園の覇者となるチャンスでゲソ……!」      ――不干渉を貫く者。  「開けないでよ」  「あたしゃいつも通り打って大将に託しますよ」      そして、学園に押し寄せる(過)保護者達――  「今すぐ!い・ま・す・ぐ!ザ・チルドレンの援護に向かうんだヨ、皆本クン!」  「私のナオミもだーッ!!」  「分かったから落ち着いてくださいよ!」  「……」  「殺生丸さま、どこに向かってるんです?」  「おい、早くジャイ子のところに行かせろ!」  「気がのらないなあ」  「ドラえもん、頼むよお。ジャイアンにころされちゃう。しずちゃんやドラミちゃんだっているんだよ」      混沌の中、果たして最後に勝利するのは――!?      『最萌聖杯戦争』 乞うご期待! 「――今度の映画撮影はこれで行くわっ!」 ぱん、と手を叩きながら大きな声を上げたのは涼宮ハルヒ。 最萌学園の同好会の一つである、SOS団の団長である。 SOS団の活動内容は、宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶこと――なのだが、 ここ最萌学園ではそれは普通に過ごしていても達成されてしまい、事件に巻き込まれるのも日常茶飯事。 それ故に、現在では学校行事やイベントの参加等の方に精を入れている、と言う訳だ。 元々ハルヒの思い付きで行動する事がほとんどであったため、あまり変わっていないとも言えるのだが。 「……」 「えーっと……あ、お茶が入りましたよ」 無言で読書をしているのは長門有希。 何故かメイドの格好をしているのは朝比奈みくる。 どちらもSOS団の団員であり、団長に勝るとも劣らない個性的な人物だ。 ちなみに、SOS団とその知り合いには同姓同名、外見もほとんど変わらないが性格等が微妙に違う人物がいるらしい。 これまた最萌学園では比較的よくある事。 「――で。それがわたし達を呼び出した理由?」 「そりゃそうよ。実際の経験者がいた方が作品にリアリティも出るでしょ!」 「あー……まあそうでしょうが、ねえ……」 そして、何とも言えない表情をしながらハルヒと話している女生徒は遠坂凛。 先ほどの映画(の構想)の題材だった『聖杯戦争』に実際に参加していた魔術師である。 「……申し訳ありません。私が口を滑らせたばかりにこのような事態に……」 「あら、セイバーは悪くないでしょ?わたし達が元々いた所じゃともかく、ここじゃ別に隠す必要なんて無いんだから」 その後ろにいるのがセイバーとイリヤスフィール。無論、この二人も聖杯戦争の参加者だ。 この3人もSOS団の面々と同じく、魔法少女だったりする同一人物(?)がいるのだがここでは置いておこう。 (……まあ、聖杯戦争を題材にした映画を撮る、って事自体は別に構わないんだけど……) 問題は内容の方だ。 激しい戦いやグロテスクな表現等は、完全に見慣れてしまっているここでは大丈夫だろうが、 撮影中に本当に大ゲンカになったり校舎が破壊される事になるかもしれない……いや、絶対になる。 修復は簡単に出来るとは言え、怒られるのは間違いない。 そうなったら自分達も連帯責任だ。 教師陣にどんな事をやらされるか、想像だけでも背筋が凍る。 「さーてと、次は出演者の交渉ね!同時にエキストラの方も募集しなきゃ!」 目を輝かせるハルヒとは対照的に、どうすれば被害を最小限に減らせるかと頭を痛める凛であった。